【書評】松本清張『黒い画集』
【評価:★★★★☆】
松本清張の傑作を読了。
短編が何作品か集められており、
昭和30年頃に書かれたものだが、情景が時代を感じさせるものの、今読んでも古臭さはなく、引き込まれる。
中でも『遭難』『証言』『寒流』は面白い。
ネタバレは書かないようにするが、
『遭難』では、
何でもない日常から、ある一つの事故をきっかけに主人公が巻き込まれていく。
松本清張の書き方で、読者を誘導し、最後はどんでん返しの展開で、そっちか!となる。
最初からじわじわと布石を置いて、後半に一気に回収していく、今流行りのパターンをこの時代にやっているところが秀逸。
じわじわとなんでもないと思ってた行動が意味を成してくる。
読み手としてはじれったい感じもあるが、引き込まれる。
傑作と呼ばれる所以ここにあり!
『証言』『寒流』では、
主人公の不倫が発端となって、事件に発展していく。
主人公の心情が巧みに表現されており、隠し通そうとするが邪魔されて葛藤するところがもどかしい。
そんなつもりはないが、読んでるうちに不倫をしている主人公の味方になってしまう。
やっぱり、いずれの作品も情景や心の動きを細かく描写しており、読み手にありありと伝わってくるところはさすが。
松本清張はこれまであまり読んでこなかったが、ドラマとは違い、文章で松本清張の描写に引き込まれる。
既にドラマでやっており、知っている作品でも文章で読むのもいい。ぜひオススメ!